【ザスパ群馬】コンディショニングをチームの文化にするための環境作り
今回は、WINBACKの活用方法をはじめ、必要性や他の治療機器との違いなどについて、チームや選手をサポートしている青木豊フィジカルコーチ(以下:青木コーチ)と村上遼トレーナー(以下:村上トレーナー)にお話を伺いました。
選手が安全安心にプレーすることが結果につながると信じ、コンディショニングをチームの文化にするために、WINBACKを取り入れてくださっています。
お二人がザスパ群馬に所属したきっかけ
青木コーチ:元々Jリーグの大宮アルディージャで、トレーナーとして治療やリハビリをしていたんですが、そのときの強化部長がザスパ群馬の強化部長になったんです。
僕は群馬出身なので、ゆくゆくは群馬県のスポーツを盛り上げたいと考えていたんですが、地元に戻ってくるのならザスパ群馬にと強化部長に誘ってもらったのがきっかけですね。
ザスパ群馬から海外に行く選手は昔からいますが、それを再現性を持ってできるクラブにしたいですし、ザスパが群馬のスポーツのアイコンになってほしいなと思っています。
村上トレーナー:以前は違うサッカーチームに所属していたんですが、ザスパ群馬がトレーナーを探しているタイミングでご縁があって、加入して4年目が終わりました。
昔からスポーツに関わるトレーナーを目指していて、スポーツトレーナーは鍼灸師を持っている人が多いと知って、鍼灸の専門学校に行きました。
昔からいる選手も含めて鍼灸の需要は高くて、鍼が効くと言う人も多いので、資格をとっていてよかったなと思っています。
他チームとの環境面の違い
ザスパ群馬のクラブハウス
青木コーチ:僕がいた大宮アルディージャは、当時J1でチームの最高成績を収めたときで、日本でも指折りの選手がいるときだったんですよ。
僕はアカデミーやトップチームにいたんですが、当時予算も物もあれば、お風呂も天然芝もメディカルの医療機器もすごく充実していて、環境面では言うことなかったと思います。
医療機器だけに何千万って単位でかけた時代にそのチームにいたので、プロスポーツチームのスタンダードはそこにあったんですよね。
だからこそ、ザスパ群馬に来たときには、トレーニング環境やクラブハウスだけでなく、選手たちのライフスタイルの差も大きいと感じました。
村上トレーナ:以前いたサッカーチームとザスパ群馬は、練習場所が日によって変わったりグラウンドを転々としたりと、そういった面は少し似ていました。
でも、ようやくザスパ群馬にもクラブハウスができて、ここで全部完結できる環境になったので、選手にとってもトレーナーにとってもかなり大きい変化ですね。
パフォーマンスを上げるための土壌作り
青木コーチ
青木コーチ:僕は、トレーナーの前は鍼灸師だったので、アスレチックトレーナーの中でもメディカル寄りのトレーナーなんですよね。
だからなのか、パフォーマンスを上げるためのトレーニングには、選手にとっての安心安全が必要という結論にいたりました。
例えば、けがは休めば治るわけじゃなくて、いろいろなトレーニング機材やメディカルのツールを正確に使うことによって、選手が安心安全に現場に戻っていけるんですよね。
なので、選手の安心安全が守られる環境作りを大事に、けがをしても帰ってこれるような、パフォーマンスを上げるための土壌を作りたかったんです。
そのために病院の先生と話をしたり連携したりと、情報交換や関係作りを意識して取り組んできて、少しずつよくなっていることを実感しています。
食べることや寝ることなどのライフスタイル自体もパフォーマンスに影響しているので、包括的にサポートできる環境作りや選手の意識改革が大事です。
なので、コンディショニングが大事という声かけを選手にずっとしてきました。
高周波機器WINBACKの魅力
左から瀬下 良二トレーナー、村上 遼トレーナー、片貝 功基フィジオセラピスト
青木コーチ:冷やすことには、アイスバスやアイシングのようなコストや手間がかからない選択肢がありますが、温めることは、体の生理学的な反応としても難易度が高いんです。
体を動かすと、深部温や体の代謝が上がるんですけど、サッカー選手って既にそれを何時間もやってるんですよね。
できるだけ体に負担をかけずに体の深部温や代謝を上げるためには、コストをかけないといけないと思っていたので、僕は高周波で温められるWINBACKを入れたかったんです。
運動せずに深部温を上げられると、エネルギー消費をしなくて済むので、その分トレーニングで負荷をかけられるんですよね。
全身的な体の代謝を上げることで、自律神経のサポートにも使えるという点も含め、体のコンディショニングを整えるためには必要なものだと思います。
アスリートは、筋肉の張りや局所的な痛みによって体に差が出ているんですが、パーツごとに動きを滑らかにしたり深部温を上げられたりする点も、WINBACKの魅力ですね。
全身的なことと局所的なところと両面とっても、深部温を上げられること自体すごいことなので、ここにコストをかけるメリットはあると思っています。
他の高周波機器との違い
ザスパ群馬のケアルーム
青木コーチ:他の高周波機器も使ったことがありますが、WINBACKはブレス機能が強みですよね。
ブレス機能は、動かさずに治療することと動かして治療することどちらの治療にも使えるツールなので、メッセージ性も高いし汎用性もあります。
動かす治療をすると、関節から勝手に潤滑剤が出るので、それが治療にもなるんです。
例えば、足首が硬い選手には、ブレスをつけた状態で足首を触りながら、背屈のエクササイズであるスクワットをしてもらいます。
すると、荷重した状態でエクササイズができるので、グラウンドで動いたときの反応や体の生理的な反応が変わるんですよ。
他の高周波機器だと、プレートを置いて施術しなければならなかったり、プローブを離すとスパークしてしまったりするものもあります。
スパークは結構悪なので、一度でもスパークを経験したら、選手は絶対使わなくなっちゃうんです。WINBACKは、安全に使えるところも気に入っています。
村上トレーナー:WINBACKがなかった頃は、練習前にお風呂で体を温めてもらうか、ホットパックや超音波で温めていました。
WINBACKはザスパ群馬で初めて使ったんですが、やっぱり必要で、あったほうがいいと思いますね。
ホットパックだと表面上は温かくなるんですけど、WINBACKは深部から短時間で温められるので効率よく治療ができて非常に良いと思っています。
WINBACKの活用方法
村上トレーナーによるWINBACKを使用した治療の様子
青木コーチ:今僕は、負荷管理やグラウンドレクなどのトレーニングを中心に見ているので直接使うことは少なくなりましたが、トレーナーのときはよくリハビリで使っていました。
ストレッチやエクササイズをしても、ハンズオンでリリースかけたりモビライゼーションしても、どうしても動かない関節ってあるんですよね。
でも、WINBACKで周波数を調整してケアすることで、関節が動き出すことはよくありました。
あと、足首の1ヶ所の関節の動きが出ないだけで、膝や腰にまで影響を与えてしまう「モビリティディスファンクション」という状態があります。
一部分が動かないだけで、キックはもちろん、立つ走るのトレーニングもできなくてリハビリが全然進まないんですが、WINBACKですぐに動きが出せると次に進められるんです。
けがって実は同じ場所がずっと動かないという問題が残りがちなんですが、時間が経過したり違うところが動き出したりしたら、治ったような感覚になるんですよね。
でも復帰したら、最初のけがが完治していないことが原因で違う部分のけがが発生する、二次的な損傷や再発が起こる可能性があります。
WINBACKを使って動かなかったところが動き出したときは、治るプロセスを加速してリハビリプロセスに乗せてくれる機械だなと感じました。
※モビライゼーション…身体の関節に対して専門的な手技により関節運動を行い、痛みの軽減や関節の可動域を改善し、身体の機能性を回復する技術。
※モビリティディスファンクション…関節の可動性が機能不全を起こしている状態。筋肉や皮膚などの軟部組織が固くなり、本来の関節の動きをしていないために、他の関節にも影響がでる場合もある。
村上トレーナー:ザスパ群馬のホームタウンである群馬県は寒いので、主に練習前に使っています。
WINBACKは、深部を温める目的で使うことが多いですが、モードがいろいろあるので、試しながら使っている段階です。
あとは、正常範囲内の可動域に達してない場合は、ストレッチやエクササイズだけでなく、WINBACKでも対処しています。
選手の状態に何がマッチするかは、トレーナーそれぞれのアプローチがありますが、その中でWINBACKもうまく活用しています。
WINBACKを使った事例
村上トレーナー
村上トレーナー:筋肉系のトラブルや予防での使用が多いんですが、肉離れ後や打撲などの硬くなっている部分に活用しています。
打撲の際には、急性期と慢性期で出力をうまく調整すると、受傷直後から使い始めた方が復帰までの予後がよく、比較的早く治る印象がありますね。
あと、足首の可動域を出すためにブレスを使ったときは目に見えて効果がわかりますし、温めて筋肉の柔軟性を出すことは、コンディションとパフォーマンスの向上につながります。
選手からも「温めるものないの」という声も上がっていたので、選手の要望に応えられてよかったなと思っています。
選手のセルフケアにもWINBACK
青木コーチ:選手自身がセルフケアで使える点が、WINBACKをいいなと思っているもうひとつの点です。
施術側と受ける側ではなく、自分でもアクティブに使えるのは、コンディショニング文化につながりますよね。
肉離れした場所はどうしても硬くなるので、選手が練習前に使うことが習慣化されていて、他のチームに行っても高周波の機械がほしいと言う選手もいます。
どこにどれぐらいの圧でかければいいのかも選手に落とし込まれているので、セルフコンディショニングの一環になっているんですよね。
ちなみに僕は、二日酔いの日や風邪引きそうなときに使うんですが、めちゃくちゃ調子がよくなります(笑)。
村上トレーナー:最初は、ケアの一環でトレーナーが選手に使っていただけだったんですけど、選手がセルフケアで使うことも日常になっています。
トレーナーは3人しかいなくて、練習前にテーピングを巻くこともあるので、どうしても手が空かないときがあるんですよね。
なので、トレーナーがいなくても選手がセルフで使えるのは、一番のメリットと言ってもいいかもしれませんね。
選手には人間的にも成長してほしいので「全部お願いします」と受け身にならないようにという意味でも、できることはセルフでやってもらうことを意識しています。
WINBACKの可能性について
青木コーチ
青木コーチ:接骨院兼ジムのような場所ができてきて、治療家さんが運動療法もするような流れがあります。
ハンズオンで一時的に痛みを取って繰り返し通ってもらうのではなく、動きをよくして定着させるといった、コンディショニングを必要としている人が増えていますよね。
パッシブな治療からアクティブな治療の流れを汲んでいるWINBACKは、これからますます重宝されていくでしょうね。
コンディショニングという言葉が普及してきている中で、病院やジムなどの分断された領域でも、コンディショニングツールやコンディショニング機器が必要になってきます。
WINBACKは、世界的にはスタンダードになりつつあるので、日本でもこれからもっと普及していったり伸びてきたりするのは自然かなと思いますね。
来シーズンの目標を教えてください
左から青木コーチ、村上トレーナー
青木コーチ:ザスパ群馬に関わらせてもらってから、医療機器を揃えたりクラブハウスやグラウンドができたり、ハード面である環境は少しずつ整ってきています。
僕は、コンディショニングを文化にしたくてザスパ群馬に関わらせてもらっているので、選手がステップアップしてチームの勝利数が圧倒的に増えて、コンディショニングが結果につながると体現したいですね。
村上トレーナー:けがは選手生命や人生にも関わることなので、けが人を出さないように予防できるところは予防して、もしけがをしてしまっても早く復帰させられるようなケアがしたいです。
選手がいい状態で試合に向けてプレーできるよう、練習からいいパフォーマンスが出せるように寄り添って、選手の力になれればなと思っています。
今回取材させていただいた方のプロフィール
■ 青木 豊(あおき ゆたか)フィジカルコーチ
群馬県藤岡市出身の1987年9月16日生まれ。
鍼灸師、日本スポーツ協会公認アスレティックトレーナー、 日本サッカー協会公認C級コーチの資格をもち、クリニックやJリーグのチームでトレーナーとして活躍。
2021年からザスパ群馬に加わり、フィジカルコーチとしてコンディショニングをチームの文化にし、選手の安心安全が守られる土壌作りに力を入れている。
■ 村上 遼(むらかみ りょう)トレーナー
宮城県出身の1992年11月15日生まれ。
鍼師・灸師、日本ラグビー協会セーフティアシスタント、日本スポーツ協会アスレティックトレーナーの資格をもち、整骨院やJリーグのチームでトレーナーとして活躍。
2021年からザスパ群馬に加わり、選手のけがを予防しコンディショニングとパフォーマンスが向上するよう寄り添い、力になれるトレーナーを目指している。
この記事を書いた人
川口 玲菜(かわぐち れな)美容ライター
美容の仕事に10年以上従事したのち、ライターに転身。 5,000名以上の接客経験と100名以上の教育経験を活かし、対談構成や取材を手掛け、話者の言語化をサポート。 思いを誠実に汲み取り、読者に伝わる文章を届けるライター。